本研究は、戦後日本の大学教育の拡大過程において、とられた大学政策とそれに対する私学の行動を検討し、以下が明らかになった。日本の高等教育拡大は、アメリカとは対照的に私立機関中心で行われてた。日本の高等教育拡大を説明するモデルとして、E.Jamesの超過需要モデルが有効である。彼女によると、開発途上国では、公立期間で収容しきれない教育の超過需要により、私立機関が発展する。それは、私立であることもかわらず授業料が低い、職業関連科目中心の、低コスト教育が行われる。そのため教育の質が問題となり、公的助成が行われるようになる。助成がおこなわれると、私立機関の性格は、公立機関のそれに類似してくる。 日本の高等教育政策は、レッセフェール策から大学、短大新増設抑制策へと転換する。そのほとんど同時に私学助成がおこなわれるようになった。この2つの策は、都市から地方へ高等教育機会を拡大する、家計負担を軽減することの期待から機会均等を実現すると考えられてきた。しかしもともと都市政策、人口政策の意味の強い抑制策は、機械均等策としては効果的でなかったといえる。また助成策も、私学経営に達する補助策と考えられ、機会均等策とはいえないことが明らかである。日本における機会均等は、所得階層間よりも地域間の問題として、また私立大学と国立大学の教育条件や授業料格差の問題として考えられた。この2つの策に対して私立大学は、大都市近郊において新増設を行い、また助成額が毎年上昇した時期に、抑制策による無競争の結果授業料を値上げした。しかし同時に私立大学歯、助成後教育条件の改善にも着手し、改善が進んでいる。私立大学関連団体は、現行の機関助成方式を支持し、増額を要求している。
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