日本では国立大学はもちろんのこと私立大学も公的助成を受けている。アメリカの高等教育と異なり、公的助成の方法は、主として機関援助の形をとる。これは、私大助成が本格化した1970年以降大きく変わっていない。この助成方法は、これまでしばしば指摘されたように政治的に決定され、それがこれまで適切であり、今後も現行のままでよいかという根拠はなにもない。高等教育に対する政府援助の方法と額は、科学的客観的に検討する必要がある。それには政府援助に関する理論的実証的な研究が有効である。 公的補助に関して、政策を決定する場合、重要な基準は、効率、平等、公正と考えられる。本研究は、この3つの基準を念頭において、高等教育の公的助成を考えてきたつもりである。すなわち公正については、公的助成の負担者である納税者と受益者の関係を論じた。具体的には、租税の負担と高等教育を通じての公費の受益が、各所得階層で同程度かを計測した。この結果については、第一章でまとめた。第二に、高等教育に対する公的助成の一つの根拠は、平等、または機会均等であるが、日本の高等教育政策の中で、公的助成と機会均等とはどのような関係にあるのかを第二章で考察した。最後に効率については、検討すべき問題が多岐にわたるが、関連する問題として、教育と経済成長の問題を第三章で扱った。もしこの関係が因果関係であれば、公的助成は一つの根拠をもつと考えられる。
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