本研究は、生涯学習型の社会を模索していく上で、教育機関へ参加する人々の多様な学習ニーズがどのような要因によって規定されているかを明らかにすることを中心課題としている。初年度は、兵庫県の住宅地域である神戸市北区(サンプル数884)と商業地域である兵庫区(同542)の質問紙調査を終了し、以下の知見を得た。 1.生涯学習に対するニーズは、「必要」という方向で一致しており、その事由は、「経済的・社会的要請」と「人間的・個人的要請」に大別される。 2.高齢者にとっての生涯学習は、生きがいの創造がその課題であり、余暇時間の増加が学習機会参加への強い規定力となっている。 3.高齢者の学習ニーズは「教養型」と思われがちであるが、必ずしもそうではなく、「職業型」も高くなってきている。 4.生きがいの創造(人間的要請)としての学習内容は「教養型」へと傾斜している。 5.生涯学習型社会を推進するためのモデルとしては、学習グループの拠点となるコア・ネットワークが必要であり、そこから周辺地域への波及効果を図るべきである。 6.しかしながら、以下の課題が平成7年度に残されている(1)発達課題と学習ニーズとの関連性(2)人間相互の無意識的な変数(属性等を含む)とコミュニテイ変数(仲間関係等)のいずれにどの程度回帰するか(3)人間相互の無意識的な影響や教育的意図を持たない影響がどの程度あるのか等々。これらの課題を解明するためには、昨年度よりもより多くの地域的特性をもつサンプリングとより精緻なデータ分析を進める必要がある。研究2年目の今年は、県内のル-ラル地域(農村、漁村、山村等)における実態調査を予定しているが、比較対象にしている都市部(神戸市)は阪神大震災の影響が懸念される。
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