平成6年度は手仕事をコアーに全教科をこれに関連づけて教授することを特色とするベーシック・エデュケーションについて、主にその提唱者であるマハトマ・ガンディーのき教育思想とこの教育の実践上の特質の究明に当たったが、平成7年度は独立後における国民教育方式としての国の政策、その教育史上の意義、影響並びに各地におけるこの教育の実施、民衆の反応などの究明に当たった。 この作業によってこの教育の展開における各地の多様性をつきとめることができ、この教育が全国的に一定の概念をもって受けとめられたものではないこと、さらに独立後の工業化政策によって政府のこの教育に対する態度の変化を明らかにすることができたと思う。この研究の一端は裏面記載の諸論文、とりわけ権藤与志夫編『二十一世紀を目指す世界の教育』「インド」(PP、79-96)(九州大学出版会 平成6年11月)、及び石附 実編『比較・国際教育学』「インド-独立への軌跡と現代」(PP、199-219)(東信堂 平成8年4月刊行予定)に結実している。 今後の本研究の展開としては、反植民地教育であるとともに、社会の底辺層のもつ抑圧された知識・技術を学校カリキュラムに反映する革命的意義を有するこの教育が、しだいに「仕事至験教育」へと転換していく実態と背景をも視野に入れ、本研究の全体的纒めを期している。さしずめ平成8年度中にも完成を予定し目下準備中であり、出版社束信堂によってすでに広告されている筆者及び渋谷英章共著『インド教育のすべて』に一章を割りて披瀝する予定である。
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