本年度は在外校に焦点をあてた。在外校の個別資料の収集と分析、および開き取り調査により、在外校の国際化教育の成否のポイントとして以下を明らかにしえた。 (1)生徒指導 (1)在外居住父兄の生徒と日本からの生徒との融合 多くの私立在外校は、日本在住者にも入学資格を広げ、入学キャンペーンもおこなっている。そのため、在外校の生徒は二つの層に分かれ、意識も異なるこの二つの生徒層を融合させることが在外校の課題となる。 (2)寮における生徒指導 在外校の多くは寮に生徒を居住させる。そのため、いわゆる全制的になるが、生徒間の仲間意識がこれを融和する。寮は規模が大きくなると教員の管理が及ばなくなる傾向があり、いじめなどの生徒間の問題行動がおきやすくなる。英国立教学院の事例がそれにあたる。 (2)地域による父母の意識差 在外校によって父母の意識が異なるため、ニーズが異なる。ニューヨーク地域では帰国後の進学を父母は意識する。また、同地区は競合関係があるため特異性を意識的に打ち出す必要がある。慶応NYがこの例となる。他方、アジア地区の幕張シンガポール校は父母の意識が進学だけではなく、多様である。さらに、現地校への入学の困難さが加わって、多様な生徒を寮に抱え込むことになる。 (3)教師の教科指導の工夫による差異 国際理解という点からみると、どの在外校も地元との交流を特別活動として組み込んでいるが、それ以上に教科指導への組み入れられた活動に個々の教員による差異が観られる。在外校経験をどう捉えるかという教師の意識に依存する度合が高い。このような個々の教員の創意工夫をどう組織化しているかが、次の研究課題となる。
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