本研究は、教育義務=学校に代えての家庭義務教育制度をもつ欧米諸国の法制(論)・判例・行政実例等を参考にしながら、わが国の就学義務法制の構造、現行法制下における「学校に代わる私教育」の可能性の存否、肯定の場合はその認容基準や手続などについて比較法制的な観点から分析・検討し、第一義的には不登校児の教育機会の保障に資する法制論を構築しようとするものであり、以下のような研究を行った。 (1)「就学義務」制と「教育義務」制の法的構造に関する日本・アメリカ・オランダの比較分析 (1)オランダの教育義務=家庭義務教育制度、アメリカの「学校に代わる私教育の自由制」および明治憲法下の就学義務制度について、その法的構造を分析・検討した。 (2)以上を踏まえて、主要には公教育、とりわけ義務教育制度の本旨、教育主権と就学義務制の関連、子どもの「教育をうける権利」および親の教育権の法的性質・内容、さらには教育的理由の「就学義務の免除事由」(学校教育法23条)への該当性などの検討・分析を通して、わが国現行法制下における「就学に代わる私教育」の可能性の存否について考察した。 (2)就学義務下における「就学義務の免除」の運用実態に関する調査研究 (1)アメリカの36州の教育省・教育委員会に質問紙を郵送し、実際に「学校に代わる私教育」が認められたケースについて、その具体的内容、法的争点、件数などについて調査し分析した。 (2)わが国において不登校児が指導をうけている民間教育施設を訪問し、そこにおける教育・学習実態を具体的に把握した。
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