1.生涯学習を地域住民の自己教育という面から把えた場合、カルチャーセンター等の民間教育産業の果たす役割も大きいが、公的な社会教育とりわ博物館の役割も重要である。地域の自然・歴史・社会・文化を様々な角度から学習する上で、「もの」=実物資料に即した教育楽譜が重要な意義をもっていることを理論的に深めた。このことは、学校教育の一貫として博物館を訪れ、展示見学等を行なう際にも十分検証することができた。 2.博物館のもつ教育的機能として、一般的に展示や各種の教育普及活動が挙げられる。しかし、社会教育施設として位置付けられる博物館は、施設としてのトータルな機能として教育的な機能を発揮する。従来の社会教育施設論では公民館が中心であり、そのため地域住民の学習要求と社会教育施設の把え方が一面的になる傾向にあったが、博物館から新たな視点を提示できた。 3.STS教育は、その教育論としての内容論・方法論が未確立であるが、博物館の「もの」=実物資料に基礎付けられた教育論は、重要な位置を占める。今日の地球的規模での環境破壊や、科学技術の発展の下での人間疎外といった問題状況がある中で、自然・歴史・社会・文化の様々な領域から人間としての成長・発達が展望される。 博物館におけるSTS教育の可能性を具体的に検討するため道内・道外の博物館における教育普及活動の現状を把握するとともに、北海道という地域に即した教育プログラムを作成する基礎的作業を行ない、「ニシン漁」と「アイヌ文化」に関連する素案を作成した。
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