1.STS教育は、科学・技術・社会を統一的に理解しようとする教育論であり、従来の科学教育のワクを超えた教育理論・運動として、近年注目されてきている。それは、地球的規模での環境破壊や人格破壊といった問題が生じ、科学・技術と社会のバランスが崩れた今日の危機的社会状況を克服するうえで、学校教育の領域に限定されるものではなく、主体の形成という意味から社会教育・生涯学習においても重視される必要がある。 2.博物館は、従来から社会教育施設として位置付けられ、その調査研究活動や資料の収集・保存・管理を基礎として、展示および教育普及活動において重要な教育的機能を果たしてきた。近年、生涯学習の中で博物館が果たすべき役割に関心が集まってきている。 博物館の主要な社会的役割は、「もの」すなわち実物資料の収集・保存・管理にあり、「もの」を基軸とした調査研究や教育活動等を展開することである。近年マルチメディアの普及により、博物館活動も多様化し、バーチャル・リアリティの世界が拡大していきてるが、それだからこそ実物を扱う博物館の役割は重要になってきている。 また、博物館数は増加し多様化する中で、自然・歴史・社会・文化の様々な領域における資料を取り扱い、いわば人類の自然認識・科学・技術・文化の遺産を継承・発展させる役割を担っている。それは同時にSTS教育の可能性を示すもの、ということができる。 3.博物館資料を活用して実施した実験授業では、アイヌ民族・文化を学習する単元の中で、今日の環境問題等への関心を触発し、また、歴史・文化への理解を深める上でも、STS教育が教育効果を上げ、今後多様な発展の可能性を持つことを実証できたと考える。
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