1.各種定期刊行物にあらわれたアイヌ民族に関する記事/論文/写真等を網羅的に入手し、内容分析と資料価値評価を行った。日本資料通信社(東京)に新聞雑誌の切り抜き業務を委託し、そのほか先住民族の10年連絡会(東京)、北海道立アイヌ民族文化研究センター(札幌)、国立民族学博物館(大阪)、アジア太平洋人権情報センター(大阪)、シサムの会(福岡)、国連寄託図書館(福岡)等を通じて関連資料を収集し、整理した。今年度分、計2034点の資料を扱った。 2.資料内容の分析・評価・選別にあたっては、前年度までの先行研究で用いた方式を踏襲し、キーワード、書誌的情報(著者・収録紙誌名・日付・記事類別・行頁数・図表写真等の有無・流布範囲など)、地域分類、主題別分類、参照情報(人名・団体名・施設名)、資料価値(1〜5点)、教材としての評価、言説主体(著者自身がアイヌ民族であるか)等の情報を付加して電算機入力し、組合わせ検索とソ-トの可能なデータベースを構築した。ファイル容量はディスク上6.8MB。バックアップ・ファイルは3.5インチ光磁気ディスク上に確保した。分類主題は、従来の枠組に5分野を追加し、97分野(サブフォルダー333項)とした。指定キーワードは、従来の枠組に3項を追加して161項とした。 3.国際先住民年が終了し、マスメディアにおける「アイヌ民族ブーム」がやや冷却してきた中、2つの顕著な傾向が認められた。ひとつは、アイヌ民族初の国会議員の誕生(94年8月)以来、報道対象が当該議員の言動に集中する傾向が続いている。すなわち、従来から限られた有名な民族運動家たちの動静報告に終始しがちだったマスメディアの取材傾向が、一層極端に収斂した。しかし他方で、従来の運動家以外の人々に焦点をあてた解説・紹介記事があらわれ始めたことも(一部の地方新聞を中心に)新しい傾向として認められる。このようなメディアの両極化傾向について、次年度以降、特に注意をむけて分析していくことにしたい。
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