研究概要 |
太平洋戦争(大東亜戦争)後に、政府や政府関係の諸機関・諸団体が推進した生活改善に関するさまざまな施策・事業を生活改善諸活動と総称するとともに、それらを次の四つに類別した(括弧内は関係した当時の主たる省庁名)。 1.生活改良普及事業(農林省) 2.新生活運動(総理府<財・新生活運動協会>) 3.保健所活動(厚生省) 4.公民館活動(文部省) これら四つは、別個に計画され推進されたが、国民の精神物質両面での生活の合理的改善をはかろうとする目的では一致していたため、各地域ではほとんど同じものとして理解され、受容された,しかし、強いて分ければ、1と3は、衣食住の向上や衛生・健康に力を注いだがゆえに物質面の改善、2と4は、主として公衆道徳の向上や冠婚葬祭の簡素化をスローガンとしたがゆえに、精神面の改善を意図した活動だと位置づけることができよう。 これら諸活動は、地域の伝承生活に直接関与しようとしたために、民俗の変化に大きな影響を与えた。いくつかの地域での実践例で検討すると、竈の改良を柱とした農山村女性の家庭内労働の軽減、生活における衛生・栄養面の向上、出産・育児法の改良、家族計画の推進、煩瑣な婚礼や葬礼の簡素化、旧暦の廃止、虚礼の廃止等がなしとげられ、現在の日本人の生活に定着している。しかし、贈答習俗を背景に打つ儀礼面については、十分な成功をおさめえたかについて疑問が残る。また、諸慣習の排除を強く打ち出したがために、家庭や地域の持っていた互助機能が低下したのではないかという新たな問題も生じた。
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