本年度の研究では、関係文献と関係史料の調査について、東京の国立史料館や国会図書館、そして横浜の農林水産省中央研究所などの遠隔地域の調査に加え、新潟県文書館・福井県立図書館・金沢市立図書館・輪島市教育委員会など北陸地域の図書館・文書館などの調査を実施した。農林水産省中央研究所の所蔵史料調査に当たっては、その紙が光りを反射するためにカメラ撮影に困難をきわめる問題を生じたが、なんとか再度の撮影により収集が行えた。関係文献目録と重要関係史料の要点はパソコンに入力して、その管理を進めるようにした。とりわけ後者の史料入力では、越中の港町氷見の基本的町記録「憲令要略」を縦横に使用できるための入力化を行うだけではなく、同記録の「応響雑記」中の住民活動の記録のデーター入力を進めた。課題の分析をより深めるために実施した関係文献の検討により、本年度では港町研究の基礎となる、その住民階層の頭振の性格について、従来の研究が大きな誤解をしていたとする、近年発表され注目されている泉氏の研究について、再検討を加えた。その結果、この新見解については実証的に無理があることをあきらにして研究ノートにまとめて発表した。また、北陸地域の近世港町の形成と住民活動の問題について解明するために、中世港町から近世港町への転換の実態について、その概要と特徴を把握することにつとめ、この点で全体的な検討に対して、個別的な検討では特に氷見を主として実施するほか、伏木・輪島についての検討も実施した。
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