本研究の研究対象時期は近世初期を主にしたが、研究の重要な対象地となる加賀藩領港町の場合は、史料の関係で初期に限定して研究するわけにもいかないので、実際の研究では初期以降にも目を向けた。また、町奉行支配都市の港町だけに対象を限定すると、加賀藩では対象都市が官腰などごく一部の港町になってしまい、輪島や束岩瀬などは対象外となるので、住民が町人として把握されていない湊の町場も研究対象に含めた。このために住民の身分理解のためにも頭振身分と漁民の身分に関して検討を実施し、この点は論文にまとめ発表した。本研究では重点において検討したテーマは、中世後期に発展した北陸地域の港町が、近世的港町として再編される過程と、そこでの住民活動について解明することであった。この時期の史料は極めて少ないため容易ではなかったが、北陸を初め広く各地で史料収集を実施し、絵図や発掘成果も資料として利用し、北陸地域港町全体に検討を及ぼし、その成果の一部を著書『近世の地方都市と町人』の中ではまとめてみた。また、住民活動の前提となる、港町の代表的住民の家的基礎についても、特に宮腰については検討を実施したが、氷見を対象とした近世的港町としての形成や、氷見住民の行動を考えるうえで重要となる状況と漁民の問題の解明にもあった。本研究によりあげられた成果の一部は、前出研究書や雑誌掲載の論文に結実しており、二ヶ年をかけた研究として十分な成果をあげたものと確信している。もっとも、研究成果のすべてが活字になったわけではなく、今後さらに研究を深めなければならない課題は多い。
|