平成6年度は、第1に、1940年代後半から50年代前半の復帰要求形成期の沖縄の民衆意識(本土在住の沖縄県人を含む)を明らかにすること、第2の50年代後半から70年代初めまでの復帰運動を、復帰運動を支えた個々の組織にさかのぼって明らかにすることを課題とし、資料収集を進めて来た。資料調査は、主として法政大学沖縄分化研究所の中野好夫文庫を利用し、琉球大学図書館所蔵沖縄関係文献の調査(ここ2、3年の新しい研究文献および新たな受け入れ史料の確認)も5日間にわたり行った。 第2の課題との関係では、沖縄人権協会、沖縄の政党関係資料、伊江島におけう基地反対運動史料等の調査・収集に力点を置き、琉球大学はじめ沖縄現地でも見られなかった史料が入手できた。しかし、原史料だけでも膨大な量であり、次年度も引き続き、法政の史料調査に費やされることになろう。 第1の課題では、新らしい史料収集は困難であり、差し当たり『沖縄タイムス』の記事から、関係部分を拾う作業を行っている。この課題との関係では、平成6年以前から着手していた戦時下沖縄の民衆統合に関する論文を「国民精神総動員と大政翼賛運動」(由井正臣編『近代日本の軌跡 第5巻 太平洋戦争、吉川弘文館)として、今期まとめることができた。これは戦後沖縄の精神史を見て行く前提作業となるが、前提という点では、引き続き沖縄戦体験の意味を自分なりにまとめる作業を進めるつもりである。復帰要求と沖縄戦体験は、分かちがたく結び付いているからである。
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