三年間の調査を通じて、沖縄県祖国復帰協議会史料(琉球大学所蔵マイクロフィルム)、沖縄県教職員組合所蔵沖縄県教職員会史料(機関紙および定期大会関係資料)、教育研究集会史料、本土沖縄県人会史料、議会関係史料、法政大学沖縄問題研究所所蔵中野好夫文庫史料、全沖縄軍労働組合史料、沖縄民政府関係史料、地元新聞など復帰運動の輪郭をとらえるための基本史料(ただし日本側史料)をほぼ収集することができ、現在これら史料の整理を進めつつある。また、沖縄県内の自治体史その他基本資料、文献も備えることが出来た。 この期間内に差当り、まとめることが出来た成果は、戦時下沖縄の民衆統合に関して論文として「国民精神総動員と大政翼賛運動」(由井正臣編『近代日本の軌跡』第5巻、太平洋戦争)、および「沖縄一同化的平和から自立・共生的平和へ」(『歴史学研究』676号)である。前者は、沖縄の復帰運動で色濃く見られた日本への同化意識を戦前との比較で見ていくために不可欠な前提作業として位置づけている。後者は、沖縄民衆のアイデンティティー・平和観・自治意識に焦点を当て、戦後50年間の変遷を概観した論文である。これも復帰運動期を沖縄戦後史の中に位置づけるための前提作業である。申請当初予定した復帰運動の直接的な分析作業は時間の関係で果たせなかったが、今後、3年程度をかけて上記史料の本格的分析を行い、復帰運動の全体像と、この運動が日本の戦後史に投げ掛けた問題を整理する予定である。
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