本年度は旅費が限られていたため、秋田・弘前および東京に調査地を絞り、図書館・文書館等での文献・史料の収集にあたった。また、真澄日記を読み解くには、年中行事に関する民俗資料が不可欠なので、この分野の図書を購入するとともに、アルバイトを雇い、これまで収集した資史料党の整理をおこなった。研究の柱となる生活文化の小テーマとしては、前年度以来追究している鳥追いと境界観念、疫病と飢饉、田村麻呂伝承などに加え、白髪水(洪水伝承)、旅人改(沖ノ口、関所)、ニシンとサケ、鷹と鷹馬牧・馬布、市神等に手ごたえを感じているが、本年度は「コモカブリ考-乞食の姿について-」をまとめ公表することができた。この論文は、北日本の日本海側地域の遊女の呼称コモカブリに着目したもので、コモカブリ呼称の成立、意義、変換についてひろく考察した。また、論文ではないが、真澄の紹介記事を雑誌『大航海』4に執筆した。さらに本学人文社会科学研究所主催の講演会(仙台市青年文化会館、95年10月28日)では、本研究の成果を生かして、「菅江真澄と天明航海」と題して講演した。また、公表にはいたっていないが、真澄日記を利用して、「和人」というアイヌ民俗に対する呼称の成立について、ほぼ論文にまとめることができた。
|