1、2年にわたって、日本と中国・朝鮮との関係に関する研究文献目録の作成とその研究動向の分析をテーマとして作業を進めてきた。1976年に出版した代表者石井正敏・協力者川越泰博共編著『日中日朝関係研究文献目録』を基礎に、その後の飛躍的な東アジアに対する関心の高まりを念頭において、その増補ならびに分析を行った。目的遂行のため、本研究費で購入したパソコンとソフトはきわめて有用であった。 2、分析の方法にはさまざまなものが考えられたが、本研究では、まず(1)国別(2)地域別(3)テーマ別の大きな3つの柱を立て、時期的な研究動向の把握に努めた。 3、その結果、基本的な文献の蒐集、目録化はほぼ目的を達成し、成果を公刊できる状況にある。一方基礎的作業に準拠した研究動向の分析については、さらに時間を要するが、たとえば、中国東北地方に698年から926年まで存続し、この間約200年にわたって日本と密接な交流があった渤海ないし渤海との関係について取り上げてみると、中国および南北朝鮮・ロシアそして日本において着実な研究が続けられているが、その研究には消長があること、そしてそれぞれに時代背景が存在していること-たとえば朝鮮・中国・ロシア三国の共同開発問題、あるいは還日本海地域振興政策など-を如実に物語る分析結果が得られた。 4、本研究が対象とした諸問題は、もっとも国際的・学際的な研究が要請されているにもかかわらず、それぞれの成果が必ずしも有効に利用されているとは言いがたい現状にある。われわれの今回の研究をそのひとつの契機とすべく、さらに研究・分析の作業を進めるつもりである。
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