研究概要 |
本年度は対馬藩の表書札方、奥書札方、組頭方の執務日記を中心に雨森芳洲の勤化記録の収集を行なったが、とくに雨森芳洲の朝鮮とのかかわりに関連して(1)朝鮮方の成立、職務、員役(2)芳洲の朝鮮使行の実態,に調査の主眼をおき作業を進めた。その結果、従来の学問的根拠に乏しい通説や評価を根本的に訂正できたが、その内容については本報告書記載の研究論文に発表している。その1、2をあげるとまず芳洲が佐役をつとめた朝鮮方だが通交の故事先例などを記録にまとめるのが職務でいわば文書局にあたり朝鮮外交とは直接関係がない。したがって朝鮮方を外交担当の役所と考え芳洲の外交業績を論じる著書があるが見当ちがいの誤説であるとわかる。また芳洲は参判使の都船主などでなんども朝鮮へ使行しているが、その多くは藩が行なう経済的な扶助(勤労に応じて朝鮮へ使行させ相応の所務(いわば功労金)を得させる)によるもので芳洲が外交のスペシャリストであったからではない。このように藩政記録から芳洲の勤化の実態がずい分明確になってきている。
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