研究概要 |
流動性の高い中国社会の場合、「場」への帰属を第一義とするメンバーシップ,共同性は生成されにくいし、同時に意味をもたない。それゆえ、相互扶助の容器として形成されるのは、いかなる「資格」を共有するかを第一義とする社会集団である。秘密結社はこのような情況のもとに、同郷結合や同族結合どと並行しつつ生成された相互扶助組織として出発した。 山田が明らかにした以上ような中国社会の特徴にたいして趙は、朝鮮に関して以下のことを特徴として指摘した。朝鮮では一九世紀に多くの民乱がおこるが、民乱に他地方の者が参加し、しかもその指導者になることもけっして珍しいことではない。朝鮮の村は、人的流動性が中国ほどでないにしても、やはり高いのである。流民も多く発生し、よそ者の新規参入もありふれた現象である。それゆえ、共同体規制は存在するものの、強制貫徹させることはできず、ひとたび民乱が起これば、殺人や放火、略奪などが行われるのは当然の成り行きであった。人々の結合のあり方は、村的結合だけではなく、同族結合などのように村を越えるものが少なくなく、人々の生活にとって村は、必ずしも絶対的なものではなかったのである。 村落結合の強度において、中国と朝鮮では差異があるが、村を越える結合のあり方が重要なものとしてあるという類似性が、明らかになったといえよう。このことは、勢い日本の結合のあり方との違いを想起せしむるのだが、村的結合が絶対的に人々を支配していた日本との比較が今後に残された課題となる。
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