清代の華中、とりわけ江南の浙江・江蘇・安徽等の地方における、当時父系親族同居の理想的な形態見なされていた「四世同居」に代表される宗族聚居について、特に、その聚居家屋の面から資料の調査を行なった、宋代以来の伝統である宗族聚居の家屋の残存を伝える資料や宗族聚居に関する資料の収集を行なうことができた。その成果は以下のようである。 (1)最近の中国の建築学界や美術史学界で、民国以前の伝統的な「民の家屋」に関する調査・研究の成果が幾つか公にされている。例えば、『中国民間美術全集 民居巻』(1993年)、『中国廳堂 江南篇』(1994年)等である。この地方の宗教聚居の家屋は、今日一般的に「廳堂建築」と呼ばれているのであるが、これらの刊行物から、この地方の明清時代の「廳堂建築」家屋の個別具体的な事例を収集することができた。 (2)最近、中華人民共和国の各縣市で新たに編纂されたこの地方の地方志は宗族に関する調査を行ない、その報告を載せている。その日本の図書館に所蔵されている地方志を調査し、宗教聚居に関する資料を収集することができた。 (3)当科学研究費で購入した民国以前の郷鎭志を始め縣市の旧地方志に記載されている宗族に関する報告を調べ、宗族聚居に関する資料を収集することができた。 (4)当研究者が、現地の調査で収集した資料を中心に、建築に関する報告と地方志の文書資料を加えて、浙江省杭州府富陽縣龍門鎭における孫氏の聚居についてまとめ公にした。
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