戦時中、日本軍の占領地であったバリ島へ派遣され、教育行政に携わっていたある日本人の日記を初年度に入手し、ワープロ化して整理したが、本年度はこの内容を分析するとともに、その実地検証や傍証をうるための聞き取り調査のため、平成7年7月から8月にかけてバリ島とジャワ島へ赴いた。その際に、当時日本軍占領下で発行された切手や通貨、あるいは宣伝用のポスターや写真などで、いまだに残存しているものを古美術商等の協力を得て収集した。 また、平成7年12月には、シンガポールで資料収集を行った。さらに、オランダの戦争資料研究所が所属している、戦争中のインドネシアにおいて使用された生活用品や宣伝用資材、新聞、雑誌などを選別し、複写や写真・スライド化して入手した。一方、当時インドネシアにおいて日本軍が宣伝のために制作した映画を、すでにオランダの情報局からビデオで入手していたが、そのナレーションを書き起こし、翻訳すると共に、システマティクな内容分析を行った。さらに、本研究の初年度にイギリスの公文書館で収集し、持ちかえった資料を整理し、内容を分析した。 これらの成果はいくつかの論文の形で発表し、数人の研究者によって共同執筆された単行本の一部として刊行された。さらに、平成7年11月に終戦50周年を記念して、湘南国際村センターにて「東南アジア史の中の日本占領」と題するシンポジウムを組織し、みずからも研究発表を行った。その後同年12月にはシンガポールにおいて同名の国際シンポジウムが開催され、これにも出席して研究発表を行った。
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