本研究は平成4年度の文部省在外研究員として、中国、内蒙古自治区の呼和浩特とモンゴル国のウラーンバートルに滞在し、当地の研究期間において収集した『蒙古源流』の写本に関する資料の整理を目的としたものである。基本的な作業として、収集してきた資料、これは基本的に未公刊の写本であるが、これと、すでに写真版などで公刊されている、既知の資料との比較研究をおこなった。その資料、具体的には写本であるが、その数は20数種におよんだ。それぞれの写本の特徴や、また写本間の字句の異同、記述内容の異同、また記述の欠語、書き加えるなど、書誌学的な作業を経て、これら多数の写本が、それぞれどのような系統に分類出来るのかの検討を行い、その結果、4種類に分類できることが分かった。従来同じような研究は行われてきたが、写本が公開されていないために、扱われた写本の数が少なく、十分な成果をあげられなかったが、本研究によってかなり正確な分析ができたと思われる。この研究成果については『アジア・アフリカ言語文化研究』50号(1995. pp. 1-41)として発表した。これと同時に『蒙古源流』の写本のなかでもユニークなものであるErdeni-yin tobciy-aについての研究を進め、同じ系統の2種類の写本と比較検討し、その校訂の結果を研究成果の報告書としてまとめた。
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