本研究はアンダルシーアの特徴的な土地所有である大土地所有に分析を加えることを目的としているが、特に中世におけるその形成に焦点をあてて検討した。これについては13世紀の再征服後のレパルティミエントを重視する伝統的見解があるが、最近この見解を批判する傾向が強まってきている。かかる動向を受けて、本研究では大土地所有を(1)個人所有と(2)団体所有に分けて検討を加え以下の結論を得た。 (1)大土地所有は一度の土地取得では完結しておらず、レパルティミエントで得られた土地が中世末まで変化せずに存続したのではない。(1)では購入、横領によって、(2)では恵与・寄進によって土地取得がなされ、複雑に変化している。 (2)大土地所有の形成はかかる複雑な変化の結果はじめて実現したのではなく、最初の土地取得、あるいはかなり早い時期に実現している。したがってその後の変化は大土地所有の増殖・肥大化の過程である。 (3)13世紀に起源を有する大土地所有がかなり見られる。最近の動向は14-15世紀を重視するが、これは世俗所領を対象にした見解である。世俗所領は土地所有を含まない裁判領主所領が多かったので、この見解は再検討の必要がある。 以上の結果を踏まえて、土地所有と所有者の社会的地位との関係について考えると、土地所有が所有者の社会的地位の上昇に繋がり、今度はその上昇した地位が領主権を背景にした横領、国王からの恵与といった土地獲得手段の増大をもたらしたというように、相互に因果関係を結んでいた。またこのような個人所有地は寄進や相続によって、教会や修道院の所有地に転化し、これによって団体所有地の増大をもたらした。
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