研究概要 |
本年度は、この研究の最終年度である。これまで、ボロ-ニャの支配者層の確認のため、Annali bolognesi(Savioliによる)Historia bolognese(Ghirarducciによる)を利用して、consoliをはじめとするコム-ネの代表者、司教、大助祭(archidiaconus)を、12〜13世紀についてまとめた。また、ボロ-ニャの大学を有名たらしめた法学者についても、M.Sarti,S.Mazzetti,J.F.von Sculteなどを用いて、まとめた。ただし、法学者については、本年度中にまとめきれなかったところもあり、今後もデータ・ベース化に努めていく予定である。なお、とりわけ史料に恵まれた13世紀半ばの法学者Odofredusに関しては、別に史料整理をおこなった。このOdofredusについては、「法学者オドフレドゥスをめぐるステイタス諸相」(前川和也編『職業とステイタス』ミネルヴァ書房1997年刊)で、通説にみられる法学者像に再考を求めたほか、本年度の研究成果報告書においても、先に論じきれなかった点について考察した。また、「中世イタリア書籍商の書籍リスト」(『奈良女子大学文学部年報』第40号、1997年3月刊)において、平成7年度において特に注目する必要を感じた書籍商(とりわけ、大学のテキストを扱い、大学の要職にある一方で、ボロ-ニャで最も有力なアルテ(ギルド)である公証人に属する者)について、書籍商の所有する書籍リストから、そのありかたを考察した。かれらは、従来考えられていたほど大学の学則に束縛されていなかったことが明らかになった。 このほか、ボロ-ニャにおいて、大学での勉学経歴を資格として求めた公証人の資格試験および史料として重要な公証人文書についても研究をすすめた。
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