研究概要 |
平成7年度は, (1) パソコンを利用して,作成した図表の分析を行った後, (2) 当該修道院と市場との関わりを地域毎に分類し,地図にプロットする。 (3) 当該修道院の市場との関わりに関して一定の結論を出し,中間的な研究論文としてまとめ, (4) 他の修道院についても,ヨシフ=ヴォロコラムスキー修道院についてと同様の作業を行う。 以上のことを具体的な作業として計画したが,(3)の段階に止まっている。 なお,本年度は,一つには地域性の問題に焦点を当ててみた。その結果,ヨシフ=ヴォロコラムスキー修道院の購入先としては,その購入回数の多さという点で,所在地であるヴォロコラムスク市をまず挙げることができるが,モスクワ市がそれに匹敵する回数となっていること,この二つの都市が群を抜いたものとなっていることを指摘することができる。次に,比較的近くの都市あるいは修道院領のある村での購入が見られるが、ヴャジマ市・ノヴゴロド市・リャザン市・カル-ガ市など遠方の都市でも購入されている。さらに,購入物と購入先との関連に注意してみると,モスクワ市では多様な財が購入されているが,特に遠隔地貿易によってしか入手できないような香辛料もモスクワ市で購入されていること,魚類についてはいくつかの都市及び村で購入されている中で,オスタシコヴォ村での大量購入が顕著であること及びここでは魚類あるいは漁業に関わる財のみが購入されていることを指摘することができる。このように,当時のモスクワ国家における商業活動の広がりと,遠隔地商業との関わり,さらには部分的な専門比(特化)の傾向をうかがうことができる。 現在,中間的な論文として部分的に仕上がっているが,この段階で,結論部分と関わって,当該時期に関する全般的評価を再確認することの必要性を感じ,文献の読みに移ることになった。本年度末までには中間的な研究論文をまとめあげたい。 以上の点を踏まえて,次年度以降,当時のモスクワ国家における市場の状況を把握した上で,総合的分析を行い,最終的な研究論文としてまとめる。
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