平成8年度については、 最終年度として、6〜7年度に行った作業を基礎に、 1.当時のモスクワ国家における市場の状況を把握した上で、 2.総合的分析を行い 3.最終的な研究論文としてまとめる。 ということを、具体的な作業として計画したが、現在、3.の段階で、最終的な研究論としてまとめつつあり、平成9年6月発行予定の『香川大学経済論叢』第70巻第1号に掲載を予定している。 前年度の「研究実績報告書」でも触れたように、当該時期のモスクワ国家においては、手工業の発達を背景とした都市の発展、部分的な地域的専門化(特化)、アジアとのアストラハンを窓口とする貿易やイギリス・オランダなどの西ヨーロッパ諸国とのアルハンゲリスクを窓口とした貿易の展開を伴いつつ、国内の商業活動が活発化していた。 ヨシフ=ヴォロコラムスキー修道院も、このような当時のモスクワ国家内の動向と無関係ではなく、所領内で消費財の需要を賄う方向を取らず、各地の市場で必要な財を購入する傾向を強く持っていたことが収支帳簿中の支出に関する分析を通して明らかとなった。 9年度については、これまで分析の対象としてきたヨシフ=ヴォロコラムスキー修道院に関する論文をひとつにまとめ、当該修道院の経済活動に関わる全体像をつかむための布石としたい。
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