本研究においては、主としてヨシフ=ヴォロコラムスキー修道院を対象として、収支帳簿中の支出に関する分析を行い、当該修道院の消費の問題に接近し、市場との関わりを明らかにするため、当該修道院が何を必要としたのか、必要とするものについて、所領内あるいは所領外において、誰から、どのような経路で入手していたのか等を検討することを目的とした。その際、消費の問題、さらには市場との関わりは修道院内の日常生活、経済のあり方を把握するためには、是非とも不可欠の要素であり、また同時に、当時のロシアにおける市場の問題とも不可分である、と位置づけていた。このような問題意識から、過去3年間に行った分析の結果は次のようになる。 1.購入されている財は、食料品・衣料品・生活必需品・漁業関係・建築材料・馬具・その他に大きく分類できる。その中でも食料品、とりわけ魚類の購入量・額の大きさが際立っている。 2.購入個所としては所領内・所領外いずれにおいてもみられるが、モスクワ市での多様な財の購入が目立っている。その中でも、遠隔地貿易によってモスクワ市に流入した香辛料の購入に当時の商品流通の状況が反映されている。ただ、モスクワ市には当該修道院の施設があり、その施設に関連してモスクワ市で購入されたものか、別の所で購入されてモスクワ市の施設に搬入されたものかを区別する必要がある。 3.オスタシコヴォ村での大量の魚類の購入に示されているように、特定の都市あるいは村において特定の財の購入がみられる。蜂蜜も大量に購入されており、しかも、モジャイスクの人からの購入が多い。 以上である.
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