研究概要 |
本年度は、前411年と前40413年の寡頭派政変を中心に研究を進めた。古代ギリシア語文献中のオ-ワードの検索については、これまで手作業に頼り事実上断念していたものが、今回の補助金の支給を受けてパソコンとギリシア語文献テキストCD-ROMを購入することによって作業を迅速に行なうことができたのは大きな収穫であった。その中でこれに関連して学界の論点のひとつであった「パトリオス=ポリテイア」問題について望外の新論理の構築をみ、その成果を昨年10月30日の広島史学研究会大会西洋史部会で「クレインポン動議とパトリオス=ポリテイア,と題して研究発表を行なった。この理論は、従来、「パトリオス=ポリテイア」を当時の穂健派が過去の時代の国政に復帰することを提案したて考えられてきたものを、当時まで代々伝わってきた国政と解釈することで、これまでのくつかの難問を解決するものである。中でも古代アテナイスにとってアテナイ民主政の創設者はソロンがクレイステネスかという問題、前4世紀の弁論家たちがソロンと民主政の守護者とした問題について有効な解釈を提示することができただけでなく、前4世紀後期に活躍したアリストテレスの民主政に関する政治観についても新しい解釈を提示することができるゆになった。今後は、この理論を中心にして新しい歴史像を構築していきたい。また、この理論については、その基本部分を「民主政期アテナイにおけるパトリオス=ポリテイア、と題する論文にまとめ、投稿した。この投稿は、来る7月30日発行予定の『史学研究』誌上に掲載される。
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