研究概要 |
平成7年度の研究計画に従い,九州,北海道地方の石器群を検討した。南九州地方の縄文時代草創期の遺跡でのデータが豊富に収集できた。なかでも石斧と共伴する『石鏃』や『石皿』などきわめて縄文的な様相は温暖化への適応として示唆的であるが,南方での神子柴系石斧の展開をどう考えるかが大きな問題点となった。 北海道では後期旧石器時代終末期の石器群は,石器組成の点でかなり複雑な様相を示していることがわかった。広郷型細石刃核とオショロッコ型細石刃核に伴う局部磨製石斧と打製石斧は,本州の神子柴・長者久保系石斧や縄文時代草創期の石斧と関連することが確実となった。他の石器(尖頭器,有舌尖頭器,彫器など)のあり方を環境適応,地域生態の成立,文化伝幡と在地集団といったキーワードで説明することが必要であろう。 九州と北海道での旧石器時代終末期から縄文時代にかけての石斧の系統を追うことは,該期の文化変化を最も極端な形でみることでもある。 また比較資料としてのオーストラリアの局部磨製石斧のデータは,文献が思う様に収集できずその出土概要の調査にとどまった。ヨーロッパでも後期旧石器時代初頭に磨製の石器が検出されてきており,この方面での類似調査の必要も出てきた。ただし生態環境面でのデータが全般に不足しており来年度の課題となった。
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