今年度は、当初年度であるため、まず和鏡資料の集成を中心的な研究内容とした。 はじめにこれまでに刊行された和鏡関係の資料集から、関係する和鏡資料をコピーし、台紙に貼って資料を整理することを行った。これまでに、広瀬都巽の一連の研究業績の資料化をおこない、それ以外の資料集の資料化を続行中である。さらにこの貼付資料を元に、備品として購入したコンピューターに入力して、データベースとして活用できるようにした。 資料調査としては、最近数多くの和鏡資料が出土して注目されている遺跡を中心に調査を行った。 まず岩手県平泉町の奥州藤原氏関係の諸遺跡から出土した和鏡資料を調査した。ここでは、従来、京都で生産された和鏡がもたらされていたと考えられてきたが、調査の結果、必ずしもそう考えなくてもよいのではなかとの結論に達した。 福岡県の博多遺跡群では、和鏡の使用状況に興味の持たれる結果が得られた。鏡筥のなかに化粧道具とともに納入された出土例が注目された。 京都市内の諸遺跡を中心に、最近和鏡鋳型の出土例が相次いで紹介されている。これらは平安時代から江戸時代まで時代の幅が大きく、まとめて考えることは困難だが、それぞれの出土遺物から、和鏡生産の実態を把握することができる。
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