今年度は、本研究の対象時期である日本の古代国家形成期のうち、弥生時代から古墳時代への移行期、および古墳時代から奈良時代への移行期に生起した社会変化・動態の一面を、祭祀の時間的・空間的変化の分析を中心に据えて明らかにする事を試みた。とくに、集団祭祀の出現・展開・消滅の様相、および首長権継承儀礼の出現・展開の様相を明確にしようと試みた。 弥生時代の集団祭祀の動向は、集団祭祀を執行した首長層の政治的権力者としての成長と密接な関連を持つがために、青銅祭器を用いる集団祭祀は、地域によっては、弥生中期段階で終息する。しかし北部九州と近畿で、弥生終末期にほぼ時を同じくして終息するのは、各集団内部での自律的契機によっては説明できない。西日本全域に渡る首長層の連合の結成、しかも純政治的なものではなく、擬制的同族関係の締結に伴う、あらたなる疑似的集団祭祀、つまり首長権継承儀礼を中核とした集団再生祈願儀礼の成立を前提とした。 本年度で研究計画が終了するため、以上に述べた8年度の成果に加えて、既報告の6・7年度の成果も総合して、1年以内に取りまとめを行う。最終報告では、弥生時代の墳墓祭祀・集落祭祀、古墳時代の支配者層の墳墓祭祀、豪族居館・一般集落における祭祀などを総括的に分析対象とし、特に、大きな転換があったとされる弥生時代末から古墳時代初頭の宗教上の実態を、社会全体の構造変化や、祭祀を担った集団間の政治的・文化的関係の変化と連動させて解明する。また、国家形成期のような社会の大きな変動期における宗教の機能と変容についての比較研究の成果をすでに吸収しており、本研究の総括に役立てる予定である。
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