神奈川県内で確認されている古代瓦窯跡のなかで、三浦半島に所在する石井瓦窯・公郷瓦窯・乗越瓦窯で生産されたものとみられる相模国分僧寺・横須賀市宗元寺出土の平瓦・丸瓦片を岩石研摩器、X線微小部分分析器(EPMA)を用いて、胎土鉱物の肉眼的観察と鉱物分析を行い、各窯跡瓦の鉱物組成の特長を明らかにした。 その結果、胎土中に含まれる鉱物の角閃石・輝石・雲母・石英・長石の含有量は窯跡別に異なり、さらに同一窯跡のものでも時期の違いによって差があることが判明した。とくに角閃石・雲母の含有量が多い公郷瓦窯のものは、宗元寺創建期の白鳳時代の忍冬蓮華文鐙瓦、相模国分僧寺創建期の珠文縁単弁五弁蓮華文鐙瓦・均正唐草文軒平瓦にみられ、白鳳時代から奈良時代にかけての瓦工人の動態とともに粘土の供給が瓦窯跡ごとに異なっていて、三浦半島の瓦窯では郡別ごとの供給による瓦製産がなされていた可能性が高いことを明らかにすることができた。
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