本申請の目的 奈良・平安時代前半(8世紀〜11世紀前半)に中国から日本にもたらされた初期貿易陶磁器が出土した遺跡を、遺構・遺物の両面から資料収集し、遺跡の性格や需要階層像を求めることである。 平成6年度実績報告 本州と九州地区の16遺跡について、筆者の1990年現在の基本資料に追加した。 図版資料:(1)周辺遺跡分布状況と出土遺跡位置 (2)発掘調査遺構図 (3)初期貿易陶磁器実測図 (4)共伴遺物実測図 (5)初期貿易陶磁器写真。文字資料:(6)共伴遺物 (7)調査遺跡の性格。(1)(2)(4)(5)(6)(7)は報告書を基本資料として複写などで集成した。(3)(5)は保管場所で実見できた8遺跡について実測・撮影した。 問題意識 初期貿易陶磁器の流通において、全体の陶磁器の流れは鴻臚館や博多を玄関口として船から荷下ろしされ、そこから九州島内や平安京、さらに本州各地へと流通したと考えられる。九州以外の地の流通経路については、博多の地に代理人を派遣して直接買い付けられる1次消費者と、いったん平安京に持ち込まれたのちに手にいれた2次消費者を想定した。平安京からさらに各地への広域流通経路が展開され、3次消費者を想定して良いか否か判断に迷う。また流通という言葉で表現することが適切であるか否かを考えたい。鴻臚館や博多に代理人を派遣して手に入れた第1次消費者については商品であるが、その後の中国陶磁の移動については、その動機や性格を、商取引と断定して良いか考えたい。
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