本研究では、今日本各地に生きて使われている「気づかない方言」に着目して、全国的な実態調査を行うとともに、周辺の概念を含めて理論的整備を図る。方言消滅の趨勢において、限られた人材・資金・時間で効率よく全国分布データを収集するために、学校・大学へのアンケート方式を採用する。 A 中学生集合調査----全国各県から2〜3校の中学校でアンケートを行った。録音テープを送付し、音声・アクセント・イントネーションの項目を含めた。コンピュータで県別グラフを作成している。ことにアクセントについては、これまでにない興味深いデータを、効率よく集めることができた。共通語化が大変な勢いで進んでいること、新語にも新たな地域差が生まれつつあることが分かった。 また全国の大学生を通じて、「気づかない方言」の地理的分布図を作る作業は予備調査票ができた。さらに検討を加え、1995(平成7)年4月早々から通信調査にとりかかる予定である。 B 沖縄調査----これまでの調査によると、沖縄県では、「気づかない方言」と「新方言」の報告例が多い。方言的差異が大きく、独自の「標準語」意識があるためである。「気づかない方言」については南九州と一致する傾向がある(例「髪をけずる・鉛筆をとぐ」)。現代方言を検討する典型的地域として沖縄県をとりあげ、公刊された方言資料を入手して、気づかない方言の具体例を、収集した。また、面接による実地調査により世代的な変化・非共通語化の様相を探った。
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