江戸時代、近世末期に各地の神社・寺院で多量に版行された小冊子である寺社略縁起類は、当該神社・寺院に関する案内書・手引書である。それらは諸説文学・伝承文学・民俗学・民衆信仰などを研究する上で、甚だ重要な資料である。 本研究では、これまで殆ど調査・研究が進んでいないこれらの資料を収集し、整理・分類・翻刻紹介・書誌的研究を行なうことを目的としている。 今年度(平成6年度)は以下のような研究を行なった。 1、愛知県西尾市立図書館(岩瀬文庫)、愛知県刈谷市立刈谷図書館、神宮文庫(三重県伊勢市)、四天王寺、大阪大学附属図書館、東北大学附属図書館(狩野文庫)などを訪れ、各図書館・文庫所蔵の近世寺社略縁起類の資料調査を行なった。また、数十点の資料の複写・写真撮影を行なった。 2、古書肆販売の近世寺社略縁起類の資料を十数点購入した。 3、上記1、2の資料を整理・分類し、書誌的調査の研究を行なった。 4、上記1、2の資料の翻刻を十数点行ない、テキストデータとしてフロッピ-に入力保存した。 5、近世寺社略縁起類の内容と関連する近世説経資料に関する論文を発表した。 来年度(平成7年度)は今年度に引き続いて各地の図書館・文庫を訪れ、所蔵の近世寺社略縁起類の調査を続けるとともに、資料の収集に努める。また、それらの資料を分類・整理し、翻刻紹介・書誌的研究を専門研究誌に発表、あるいは、近世寺社略縁起類の資料集を出版刊行する予定である。
|