本研究の目的は、新『黙阿弥全集』刊行のための基礎研究として、幕末・明治期の歌舞伎脚本の所在調査・書誌調査を行い、個々の作品について諸本の系統を明らかにすることにある。河竹黙阿弥の活動期間は幕末から明治にわたっているため、調査対象を台帳(自筆本・写本)に限るのではなく、明治期に刊行された活字本をも視野にいれることが本研究の特徴である。 平成6年度に行った調査研究は次のとおりである。 A.台帳の所在調査・書誌調査 イ.各所蔵機関の台帳の閲覧と書誌調査 ロ.台帳各冊の表表紙と裏表紙の撮影 B.明治期の活字本目録の作成 Aについて:Aのイについては、閲覧手続きの難しい関西松竹図書館以外はほぼ調査が完了した。Aのロについては、早稲田大学演劇博物館所蔵の黙阿弥関係の台本の撮影を完了し、引き続き良質の台本を閲覧・複写する作業にはいっている。ただし、演劇博物館所蔵台本の中には虫損の甚だしいものが多いため、研究成果を網羅的に発表するのは修復作業を待たねばならないと考える。 Bについて:明治期刊行の活字本のうち、単行本と新聞の類については調査が完了した。しかし、当時の一級資料である雑誌『歌舞伎新報』の情報がかなり重要であることから、現在は同誌の記事を整理することに調査の重点を移そうとしている。 調査結果をデータベース化することも本研究の重要な目的である。現在、台帳・活字本ともにかなりのデータが集まっている。これらはすでにコンピュータに入力済みであるが、これをさらに公開可能な形式に整形する方法を模索中である。
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