前年度よりの作業の継続として、本年度は『源氏物語』柏木巻から早蕨巻までの作業終了を目指した。既に基礎調査(写真複製等による『源氏物語大成 校異篇』との照合)および疑問箇所の原本調査をほぼ終え、機械入力された調査データを印刷形態に整える作業に入っている。 またその作業と並行して、前年度に調査を完了したが、少女巻から若菜下巻までの部分につき、朝顔巻以前を対象とした『源氏物語大成 校異篇 河内本校異 補遺稿(一)』(1993年3月)・『源氏物語大成 校異篇 河内本校異 補遺稿(二)』(1994年9月)と同様の形に整え、『源氏物語大成 校異篇 河内本校異 補遺稿(三)』としてまとめ、研究者の利用に資すべく配布した。これは当初、本補助金による成果は、一括して最終年度に印刷物の形態にまとめる予定であったが、予想はるかに越える分量の調査データとなったため、予定を変更して、年度ごとに調査結果を公開することとしたことによる。 またこの前年度調査分の成果に基づき、尾州家河内本の補写十三帖につき、耕雲本による補写であるとの従来の見解とは逆に、この補写十三帖についても、耕雲本の親本は尾州家河内本なのであることを、新たに調査をした東洋大学蔵耕雲本玉鬘巻の本文を主たる根拠として述べ、尾州家本の補写十三帖の親本としては、鳳来寺本との関係を重視すべきとの見解を、「尾州家河内本から耕雲本源氏物語へ-所謂補写十三帖をめぐって-」(『愛知県立大学文学部論集』(第44号)にまとめ発表した。
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