本研究は、平成4年度文部省科学研究費補助金奨励研究(A)「河内本源氏物語の校合と校異語彙索引の作業」での研究成果をもとに計画したものである。上記研究において、池田亀鑑編著『源氏物語大成校異篇』(以下『大成』と略称)で割愛された河内本校異を、原本調査に基づいてすべて採録し、その過程で発見された『大成』校異の誤りを正した。その成果はすでに『源氏物語大成校異篇河内本校異補遺稿(一)』(1993)としてまとめたところであるが、対象としたのは桐壺巻から葵巻までであり、本研究はその後を受け、平成6年度から作業を開始し、『稿(二)』(賢木巻〜朝顔巻、1994)、『稿(三)』(少女巻〜若菜下巻、1995)、『稿(四)』(柏木巻〜早蕨巻、1996)、『稿(五)』(宿木巻〜夢浮橋巻、1997)として成果をまとめ、これで『源氏物語』全巻の調査を終えたことになる。 上記『源氏物語大成校異篇河内本校異補遺稿(一)〜(五)』にて調査した校異は、すべて機械可読データとしても保存している。そこでは校異に採用したミセケチ・書入傍記などの情報を、機械データとして検索可能なものとすることによって、原本調査のデータシートにそのまま流用でき、さらにはそのデータに一定の符合等を付し、日本語組版ソフトT_EXを使用することで、校異データに『大成』と同様の符合を付した印刷用版下を作ることも可能になった。諸本調査および校異作成からその印刷刊行までの過程で発生する人為的誤りを、機械を使用することで可能な限り減らすための方法を、ほぼ確立できたように思われる。
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