平成七年度も、前年度と同様、購入を予定していた文献資料の発行中止等の影響をうけ、つねに研究計画の変更を余儀なくされた。具体的にいえば、前年度末に購入した「宝巻」初集を承けるはずの二集刊行計画が資金問題から頓挫したのみならず、これにかわる「中国宝巻総編」の香港からの刊行計画についてもなんら進展をみないままに終わった。幸い台湾の「民族曲芸叢集」の刊行は順調で、これと今年二月になり購入出来た「関帝文献匯」、さらには別途蒐集することが出来た、潮州歌の、百三十九種およそ三百冊にものぼる線装木版本による影印本、安順地戯の、全本五種ならびに選段二種の油印本により、研究は滞りなく進めることが出来たと考える。 研究成果としては、潮州歌については作成中の「潮州歌冊研究目録」が、安順地戯についてはすでに執筆を終えた「安順地戯九溪油印本解説」(中文)が挙げられる。前年「関羽の物語について」を発表した関羽関係については、研究を深めるべく「関羽関係文献目録兼所蔵目録」を作成する一方、「大明一統志」に見える剣神の物語を精査し、「剣と馬の泉の伝説一覧表」にまとめた。 論文としては、「関羽の物語について」を承け、関羽を斬首龍の下凡転生したものとみなし、この立場から多くの民間説話を使って「三国志演義」「西遊記」に新たな光をあてた「斬首龍の物語」がまもなく公刊の運びであり、その「三国志演義」が「金瓶梅」に与えた影響について論じた「「金瓶梅の構想」についてが五月頃刊行される予定である。このほか宋代を中心とする物語の状況について論じた「宋代社会と物語」、車王府曲本の現状を資料によって論じた「「中山大学図書館珍蔵"車王府曲本"編目」について」を含む「研究前後」についてはすでに公刊されている。
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