研究概要 |
三ヶ年計画の二年目に当たる本年度は、初年度に引き続き、『聖マ-ティン伝』のテクストの校訂とそのコンピュータ可読テクスト化を進めた。とくにAelfricの二つの版(Catholic Homilies,2nd Series,XXXIV;Lives of Saints,XXXI)について、原写本のマイクロフィルムおよびファクシミリ版にもとづいてGodden,Skeatによる既存の刊本の徹底的な見直しを行い、転写上の誤りを正すともに、原写本の句読法などを再現したより正確なテクストの作成につとめ、これをほぼ完成した。年度末までには完成の予定である。特に、刊行後一世紀近くを経たLives of SaintsのSkeat版には転写上の誤りが少なからずみられ、今回の見直しでそれを明らかにし得たことは、将来このテクストの新たな校訂本の公刊をめざすうえでも、大きな意義をもつと考えている。ただ、上記の方法による今回の見直しでは、句読点の細部などについては完全を期し難い恨みがある。この問題の解決のためには、カラーマイクロフィルム、そして究極的には原写本そのものの実地調査が必要であるが、これは将来の課題である。 なお当初は、五つの校訂本のコンコーダンス作成を今年度の計画の一部に含めていたが、今年度の研究計画の対象であるAelfricの二作品は長大で、その校訂に予想以上の時間を要し、今年度はコンピュータ可読テクスト化など、コンコーダンス作成の準備作業を終えるにとどまった。これについては、引き続き来年度も考えていきたいと思っている。
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