平成8年度には7年度に日本英文学会で口頭発表した「『欽定英訳聖書』に見られる表現‘while the world standeth'の系譜」を論文に直して出版した。論文作成においては、6年度作成のTyndale著『ロマ書解説』(1526)の電子テキストや英語研究総合誌『英語青年』に掲載された論文「同意語並列構文の系譜」を参照した。本論文「欽定英訳聖書に見られる表現‘while the world standeth'の系譜」では、欽定訳の表現がWilliam Tyndale訳『新約聖書』に直接由来し、その源は古英語頭韻詩にあることを解明したが、科学研究費補助金で購入したBible in English on CD-ROMを使って同表現の追加調査を行うと、その後のWesley版(1770)とNoah Webster版(1833)にも継承されていることが判明した。 平成6年度に作成を始めたOED採録のTyndale引用文リストは、その試作品を完成して本研究に使用した。これにOEDの語義情報・付加説明・比較すべき他の引用文をも取り込み、Tyndale語彙辞典の形に拡大するために継続作業中である。 本研究では当初の目的を達成し上記論文を完成した。これに新発見事項を加え、英文で書き直したものを、次年度の英国の学会The Tyndale Societyで発表する予定である。
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