平成7年度研究課題として当初計画していたのは、主要には三点だった。一つは、アジア女性劇作家の作品、アンソロジーを収集し、分析すること。とりわけ、韓国、フィリピン、マレーシャ、インド、タイ、インドネシア、スリランカなど、1992年に開催した「第一回アジア女性演劇会議」で収集したものに加えてさらに資料を収集分析することだった。二つ目には、現代の英米の女性演劇グループの各地域における演劇活動を取材すること。アメリカの現代の代表的なリージョナル・シアターあるいはコミューニティー・シアターとして、ネブラスカ、オマハのマジック・シアターを取材すること。そして三つ目に、現代日本の女性演劇グループの演劇活動を取材すること(岸田理生のグループ、渡辺えり子のグループ、如月小春のグループ「NOISE」、「青い鳥」グループ、「自転車キンクリート」グループなど)だった。 平成6年度では、主として20世紀初頭の第一波のフェミニズムの高揚という文脈から、英米・日本の女性演劇人の近代的な自我の覚醒と演劇表現の関係を明らかにしており、今年度の課題は、それに引き続き、第二波のフェミニズムの高揚との関わりで、現代の女性演劇人の新たな表現の可能性を探ることだった。しかし、私の勤務先の大学学部の役職上、学部3役に就くという予定外の行政負担のため、当初計画遂行に大幅な支障を来すことになった。上記3点の今年度の課題のうち、第三の課題については、かなり資料を集めたが、まだ十分読みこなしていない。第一の課題については「第一回アジア女性演劇会議」で集めた資料以外に新たに付け加えるものを入手していない。今後の継続課題としたい。そこで今年度のまとめとしては、第二波のフェミニズムと英米の女性演劇人の表現に焦点を絞り、最終報告にまとめておきたい。
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