1.質問と返答からなる対話が、どのような条件下でどのような機能を果たしているかを、フライブルク・コーパスを中心とするテクスト・データベースから得た資料に基づいて明らかにすることが本研究の目的であるが、平成6年度は研究の初年度にあたり、データベース検索のための機器の納入が年度半ばになることが予想されたために、データベース検索に先立ち、ドイツ語話者5人による座談会の録音とそれに基づく談話資料の作成をおこなった。その一部を分析した結果は「談話を構成する要素-話者交替とあいづち-」(『好村冨士彦教授退官記念論集』)にまとめてある。 2.9月上旬に大阪で開かれた研究会において、ウユルツブルグ大学のシュウイタラ教授およびマンハイムのドイツ語研究所のカイム研究員と談話分析研究の様々な側面についての意見交換をおこなう機会があった。データ採取の方法、分析目的に応じて記述において留意すべき点、文脈の策定と形式化に伴う問題点、今後の研究において参考となる資料提供者などについて様々な有益な助言を得た。 3.本来の目的であるデータベースの検索、およびそこから得た談話資料の分析を現在おこなっているが、その際に、1.であげた生の談話資料の分析経験が大いに役立っている。また、フライブルク・コーパスの一部については音声資料も入手できたので、文字資料に併せて活用している。複数の異なった種類のデータに基づく分析によって、より精密な結果を得ることができることとなったが、このことは同時に分析に要する時間の増大をももたらし、今後の課題となっている。
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