研究概要 |
質問と返答から成る対話が、どのような文脈においてどのように機能しているのかを、実際の会話資料について明らかにすることが本研究の目的であった。質問者の知識の空白を埋めるために用いられる典型的な言語形式としての疑問文が、現実の会話においてどのように用いられているのか、また、疑問文が質問のために使用されないときには、どのようなコミュニケーション機能をになっているのか等を、具体的な会話資料の分析を通じて調査した。使用したのは、昨年度収録したドイツ語話者5名による座談会記録およびフライブルク・コーパスである。実際に分析作業を行った結果、録音テープを自分で起こして作成した座談会記録が提供する情報のほうが、コーパスより検索によって得た資料よりも、はるかに豊かであることが判明したので、当面の重点を座談会資料に置くこととし,フライブルク・コーパスのデータは参考資料として適宜参照することとした。 座談会資料の問題点は、発話を質問として特定することであったが、この分析の過程でG.レイコフがヘッジと名付けた一連の表現の出現頻度が高いことに気づいた。また、ヘッジが質問と共起する場合には質問の知識の補填という性格が一方では曖昧となり、しかし、他方ではそのことによって質問を受けた聞き手の側の心理的負担が減少するために、かえって自由に情報を提供できる場合がある、というふたつの相反する現象が生ずることに気づいた。この現象については平成7年9月の日本独文学会秋季研究発表会におけるシンポジウム「言語における連続性と離散性」において「疑問表現における連続性と離散性」という発表をおこなった。
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