平成6年度においては、イディオムに関する最近の研究を概観することによって、日独のイディオムを比較・対照するための観点を見いだし、整序することが作業の中心をなしていた。そのような作業の中間報告として、とりあえず「日独イディオム対照の視点」という論考をまとめ公刊した(『広島大学文学部紀要』第54巻、1994年12月、193-210頁)。この論考は、国外、国内におけるイディオム研究の現状について、いくつかの重要な仕事を概観したあと、日独イディオム学を構想するという視点から、先行研究を参考にしなかせら、日独イディオム対照の視点を整理したものである。そこで提案した12の視点で、日独イディオムのすべてを漏れなく分類・整理できるかどうか、これまで収集したデータを基に作業を進めているのが現状である。さらに1994年11月12日松江市で開催された「日本独文学会中国・四国支部研究発表会」で「日独イディオム対照の視点」と題する上記論考と同主旨の報告を行い、論議に供した。(報告の内容は、日本独文学会中国・四国支部学会機関誌『ドイツ文学論集』28号に掲載予定。) 他方では、ドイツの新聞からのイディオム用例の収集を行なっているが、その中でも、とりわけ1989年以後におけるドイツ統一をめぐる報道の中でイディオムの使用が目立っていることに気づいた。「ドイツ統一とイディオム」というのが、魅力ある研究テーマとして浮かび上がってきた。これについては、ドイツ連邦共和国フライブルク市で発行されている『バ-デン新聞』のドイツ統一前の1989年4月1日〜1990年3月31日の1年分のマイクロフィルムを購入し、関連のイディオムを収集しているところである。この作業については、もうすぐその成果をどこかで公にできる予定である。
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