平成6年度は、資料収集・整理と、その分析に基づく試論的な研究発表を行なった。 資料収集・整理については、現有の臨地調査によって得られた音韻資料、および先行文献・報告書によって得られた音韻資料のデータ・リスト化を進めた。また、資料収集については、10月下旬から11月にかけて、久野マリ子(国学院大学・教授)を調査補助者として、沖縄宮古諸島の大神島周辺の臨地調査を行なった。また、音声資料の分析に必要な音響分析ソフトとして、現有のシステムの他に「音声工房」を購入した。 研究発表については、日本音声学会289回例会(6/18)において「音変化の観点からみた南琉球方言の諸相」と題して口頭発表を行なった。この発表は、日本語周辺方言の一つである南琉球諸方言をとりあげて、その周辺方言的類型性を多変量解析等の統計的手法により解析したものである。現在、その後の追加データの分析を加えて、学会誌論文投稿の準備中である。 本研究の目的である、日本語周辺諸方言音韻の構造的類型性および通時的類型性を分析するための基礎的な音韻資料の収集・データリスト化が充分に進められた。ことに琉球諸方言については、予定通り宮古諸島大神島方言のDAT録音・データリスト化・音響音声学的分析が進捗した。本土方言では、東北地方・出雲地方・四国南部地方・九州南部地方について、現有の資料を中心に音響音声的分析を予定通り進める。また、新たに考察の対象とする方言として、壱岐・対馬方言等を加える必要が判明し、これに対しては文献資料で補うこととした。
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