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1996 年度 実績報告書

ヒッタイト語の動詞体系の歴史言語学的研究

研究課題

研究課題/領域番号 06610473
研究機関京都大学

研究代表者

吉田 和彦  京都大学, 文学研究科, 教授 (90183699)

キーワードヒッタイト粘土板 / ヒッタイト語 / 比較言語学 / アナトリア祖語 / 破擦化 / 子音の長さ / 子音の強さ / 動詞
研究概要

ヒッタイト粘土板の厳密な時代区分に基づいて、母音語幹動詞に付与される3人称単数現在語尾を統計的に調査した結果、次の2つのことが明らかになった。(1)古期ヒッタイト語のオリジナルの粘土板では、a-語幹動詞とu-語幹動詞がとる一般的な語尾は-zziであるが、後の時代のコピーでは-ziという語尾が増えていること、(2)地方、i/e-語幹動詞では、時代にかかわりなく、-zziという語尾が一般的であること。(1)については、古期ヒッタイト語のオリジナルの粘土板に記録されているar-nu-ur-zi「彼は持ってくる」KBoVI2I38という形式が、その中期ヒッタイト語におけるコピーではar-nu-ziKBoVO3I9と書き改められているような事例からも裏づけられる。これは、azとuzという文字に関しては、画数が多いために、後の時代の書記はそれらを省略して記録したことによると考えられている。(2)については、izという文字は3画から成る簡単なものであるために、古期ヒッタイト語のオリジナルの粘土板においても、その中期、後期ヒッタイトのコピーにおいても、書記はizを省略せずに-iz-ziと書いたと考えられる。ところが、このようにizを省略する十分な動機がないにもかかわらず、izが書かれていない例が古期ヒッタイト語にいくつかみられる。たとえば、u-e-mi-zi「彼は見つける」KBoVI2IV12、i-e-zi「彼は行う」KBoVI2I60などである。これらの-i/eziを持つ形式に対して比較言語学的分析を施した結果、それらはアナトリア祖語の段階で^*-diという語尾を持っていたことが明らかになった。この^*-diは、前ヒッタイト語の段階で、^*-tiという語尾が破擦化を蒙って^*-ttsiになったのと同様に、やはり破擦化して^*-tsiになった。^*-ttsi(<^*-ti)と^*-tsi(<^*-di)のあいたの子音の長さの違いは、^*-tiと^*-diとのあいたの子音の強さの違いに対応し(^*-tiでは強く、^*-diでは弱い)、古期ヒッタイト語の-zziと-ziという綴りの違いに反映されている。

  • 研究成果

    (4件)

すべて その他

すべて 文献書誌 (4件)

  • [文献書誌] 吉田和彦: "ヒッタイト語研究の新展開-歴史文法の構築にむけて" 言語. 25巻8号. 66-73 (1996)

  • [文献書誌] YOSHIDA,Kazuhiko: "A Further Remark on the Hittite Verbal Endings 1pl.-wani and 2pl.-tani" Papersn on Indo-European Topics in Honor of Eric Hamp. (印刷中).

  • [文献書誌] YOSHIDA,Kazuhiko: "Hittite Verbs in-Vzi" Acts of the III.International Congress of Hittitplogy. (印刷中).

  • [文献書誌] 吉田和彦: "印欧祖母に推定される母音交替のタイプについて" 京都産業大学国際言語科学研究所所報. (印刷中).

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公開日: 1999-03-08   更新日: 2016-04-21  

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