研究概要 |
MacSpeech Lab IIの改良版であるSound Scope II(GW Instruments, Inc.)を中心とする音声分析装置が整い、確実に有意義なデータ分析ができつつある。 20Khzの録音・再生・分析能力を活かして、別の費用で購入したデジタル録音器に収録した音声を分析している。さらに、私も所属していた重点領域研究「日本語音声」(杉藤美代子代表)の各班が製作した各地の日本語音声を収録したCDからも、各地の例をピック・アップして分析している。現在までに、痛感したことは、音声連鎖、とくに、子音の分析には、もとの録音時に細心の注意を要すると言う点である。その点で、満足できる音声資料が多いとは言えないことを発見した。勿論、それでも、各音声の調音に要する時間差を測定し、調音の比較的に楽な音声(連鎖)と困難な音声(連鎖)を識別し、各音声(連鎖)間の困難さの度合いのハイエラーキが得られつつある。 従来のソノリティ・ハイエラーキや筆者の音声ハイエラーキは、例えば閉鎖音ptkは1つのグループをなしていたが、この研究によって調音の容易さや困難さのパラメターを新たに導入することになろう。また、音節間の隣接条件にも、調音可能性の度合いが関与していることを示すデータも出始めている。 最近、新たな研究視点を加えた。ことばの言い誤りに、調音可能性の度合いが関係しているようだ。こどもは「からだ」を「かだら」としばしば、言い誤るが、そのほうが、調音が楽であるからと言うのが、要因の1つであるらしい。音声分析装置を使用して、支持的データをかなり得ている。心理言語学者の寺尾康と協力して、こちらのほうは日本言語学会に発表を準備中である。
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