研究概要 |
平成6年度は、(1)セミバイリンガル話者の知覚単位、(2)国内の外国人学生が日本語と外国語を知覚する際の単位、(3)日系ブラジル人とシラビーム方言話者の予備調査をすることの3点であった。 これらの目標に対して明らかにしたことは、これまで実施してきた実験方法ではモ-ラが単位であるか否かは明らかにできるが、モ-ラと音節の本質の関係を明らかにするには至らない可能性が分かってきた。上記の3つの研究では、モ-ラのみならず音節が重要な役割を演じている可能性が高いことから両者の関係を明らかにすることが理論研究に不可欠である(海外での研究では音節対非音節の対立で研究が進められており、両者の間に関係があるという前提がない)。そこで、これまで気がついていなかったモ-ラと音節の関係を明らかにした上で上記の3つの目標を明らかにすることが必要であるとの判断を行なった。そこで、本年度の研究では、(3)の準備を進行させると共にこの両者の関係を明らかにすることに重点をおく方向で研究を行なった。 その結果、(1)日本語のモ-ラの理解には従来の研究で指摘されているように時間の情報が重要な役割を担っていること、(2)従来のモ-ラの研究ではモ-ラのみを扱っており、音節構造との関係を論じることは無かったが、本研究からモ-ラの認識には音節の概念が不可欠であることを明らかにし、(3)音節の情報を含めたモ-ラの知覚の基本のモデル化を行なうことができた(Otake and Yoneyama,1994a;大竹・米山,1994b)。更に鼻音モ-ラの特質について研究を行ない、従来の研究で指摘されてきた鼻音の時間長と音響特性はモ-ラの認識には無関係であることを明らかにした(Otake and Yoneyama,1995)。このことは、特殊モ-ラは同一の特性を持たない可能性がある。次年度では本年度で明らかにしたことを踏まえて上記の目標を明らかにする。
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