研究課題/領域番号 |
06610486
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研究機関 | 神戸親和女子大学 |
研究代表者 |
松村 恒 神戸親和女子大学, 文学部, 教授 (10148562)
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研究分担者 |
松村 淳子 神戸国際大学, 経済学部, 助教授 (10239080)
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キーワード | Steinhowel / AEsop / fables / Macho / Caxton / motif / type / イソポのハブラス |
研究概要 |
Steinhowel系寓話集成本の発展形のうち後代の影響の点からして最も大きな位置を占めるものは、William Caxtonの初期近代英語版であるが、これはSteinhowelに直接由来するものではなく、Julien Machoのフランス語版をその藍本とするものである。後者は15世紀後半にリヨンにて出版されたインクナブラであり、原本の実物を直接利用することは困難である。フランスから原本のマイクロフィルムを取り寄せ、取り敢えず全体の対照表を作成し、SteinhowelとCaxtonの中間に介在するものであることは確認した。と同時にインクナブラ目録を検索する途上で、1484年フォリオ版以外にも数年度版を重ねていることが判明した。そのうちの若干についてはやはりマイクロフィルムにしてもらいフランスより送付してもらい、検討を開始したことは前年度の報告にも記した通りであるが、更に余の資料も存在するらしいことが知られた。ただカタログのみを通じての情報では必ずしも充分ではなく、Machoの伝承を一応辿れる状況には到ったが、すべてを尽くしているか否かの確認にまでは到達してはいない。そこで早急にすべての結論へ急ぐことの代わりに、ケーススタディとして、Alfonce 11などを題材として徹底的に異同を記載して、その伝承過程に関する作業仮説の設定を試みた。これが例として選ばれたのは、既にこの系統以外のパラレルの収集が済んでいることにより、作業が容易であったからである。それに伴いSteinhowel自体にも更にその内部に複数の伝承を認め、そのいずれかがMachoのいずれかと相関した関係を有することが推測されるに到った。同様の手続きを更に他へも適用して、この仮説を補強(場合によっては補正)するという方法手順が確立されたことをもって、一応の成果とみなしたい。このケーススタディの進行途上に更なる資料をも確認が可能となり、仮説が定説へ近づいてゆくものと確信する。個別の成果は個々の論文で、全体にわたるものは独立の刊行物のかたちで問う予定である。 なお成果の一部は学内紀要に掲載すべく投稿したが、初校の段階で編集サイドから全体の頁数の関係で次号送りにしてほしい旨の通知を受けた。止むを得ず一部を私家版の体裁で出すことにした。
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