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1995 年度 実績報告書

成立期コモン・ロ-における学識法(ローマ法・教会法)の影響に関する実証的研究

研究課題

研究課題/領域番号 06620004
研究機関九州大学

研究代表者

直江 眞一  九州大学, 法学部, 教授 (10164112)

研究分担者 西村 重雄  九州大学, 法学部, 教授 (30005821)
キーワードコモン・ロ- / 中性ローマ法 / 教会法 / 訴訟手続
研究概要

本研究の目的は、1230年頃イングランドで書かれた著者不明の裁判実務の手引書『種々の裁判所の慣習』(Consuetudines Diversarum Curiarum)を主たる検討素材として、従来低く見られがちであった成立期コモン・ロ-における学識法(ローマ法・教会法)の影響を再評価することにある。平成6年度には、この史料全体の約四分の三について、現存する二写本および刊本の比較を行ないながら、解読を進めた。引き続き、今年度(平成7年度)は、残りの世俗の刑事裁判権に関する部分を同様の方法で解読した上で、同時代の他の史料が示す裁判実務との関係において本史料が有する意義を確定し、コモン・ロ-成立史における学識法の位置を訴訟手続の側面から明らかにする作業を行なった。
その成果は、以下の諸点に要約することができる。(1)教会裁判所における証人による証明と世俗裁判所(コモン・ロ-)の民事裁判における陪審による証明の間には、手続上の類似性が認められる。しかも、この史料が描く陪審の宣誓・協議・評決提出方法等については、1189年頃成立したコモン・ロ-最初の教科書と言われる『グランヴィル』には全く説明がないことから、ローマ・カノン法における証人手続の整備過程と並行的に陪審手続の整備が進められたと考えることができる。(2)教会裁判所のみならず世俗裁判所でも、伝統的な口頭手続重視と並んで、書面の利用が進んできている。(3)13世紀後半から14世紀前半の教会裁判所の実務(とりわけ証人の証言をめぐるルール)についてはすでに、ローマ・カノン法の本来の手続からの部分的な逸脱が指摘されているが、そのようなイングランド教会法の特徴は、本史料のような聖俗両裁判所の実務に関わる人々を対象として書かれた手引書の存在を前提としており、むしろコモン・ロ-と教会法が相互に影響を及ぼしあっていた結果を見るべきであろう。
なお、以上の研究成果の一部については、立命館大学で開催された法制史学会第43回研究大会において「コモン・ロ-成立期における訴訟手続 -13世紀前半の一裁判実務書を手がかりにして-」なる題目の下に報告を行った(平成7年10月8日)。

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公開日: 1997-02-26   更新日: 2016-04-21  

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